○岐阜県ゆかりの先駆者たち
第10回
日本の図書館界の大恩人
和田萬吉(わだまんきち)
1865-1934(慶応元年−昭和9年)

 図書館界の大先達といわれた和田萬吉は大垣の出身です。
 萬吉は慶応元年(1865)8月18日、大垣藩士和田為助の三男として生まれ、幼少期を大垣で過ごしました。
 明治6年(1873)8歳で長兄を頼り上京。同23年に東京帝国大学文科大学国文科を卒業しました。

 卒業後、東京帝国大学附属図書館へ奉職。明治26年(1893)に「管理心得」、同29年に助教授に任ぜられ、同時に図書館管理を命ぜられます。同30年には若干32歳で館長となり、図書館が大学の中枢機関となる基礎を築きました。
 大正8年(1919)に文学博士となり、翌年に日本初の図書館学の講義を行いました。同年、文部省が図書館員教習所を創設し、ここでも後進の育成に努めました。
 日本図書館協会の前身である日本文庫協会は、明治25年(1892)に結成されました。萬吉は創立に参画し、同37年に会長となりました。同39年には、第1回全国図書館大会を開催しました。
 また、『図書館雑誌』の発行を提唱し、明治40年(1907)に創刊を果たしました。同誌は今も日本図書館協会の機関誌として続いています。

 さらに萬吉は、大正11年(1922)第17回全国図書館大会で「図書館運動の第二期」という大方針を示し、後の図書館運動に大きな影響を与えました。
 翌年、関東大震災により東京帝国大学附属図書館が焼失。貴重な蔵書の焼失は、図書館を愛し続けた萬吉にとって痛恨事であり、その責任を取り30年に及ぶ図書館長の職を退きました。
 萬吉は、図書館界に大きな足跡を残し、昭和9年(1934)に70歳で亡くなりました。
[参考文献(岐阜県図書館所蔵)]
『図書館を育てた人々 日本編T』 石井敦 日本図書館協会 1983年
『文教のまち大垣』 大垣市文教協会 1984年
『日本図書館協会五十年史 事績年表』 日本図書館協会 1986年
「和田萬吉と戯画」(郷土研究「岐阜」第47号掲載) 小川トキ子 岐阜県郷土資料研究協議会 1987年
[和田萬吉の著作]
『図書館小識』(共著) 丸善 1915年
『図書館管理法大綱』 丙午出版社 1922年
『図書館史』 芸艸会 1936年 その他著作多数
(岐阜県図書館 松久記)