○岐阜県ゆかりの先駆者たち
第11回
低廉高品質の化粧石けん製造販売
長瀬富郎(ながせとみろう)
1863-1911(文久3年−明治44年)
明治時代に､高品質の洗顔用石けんが安く人々の手に入るようにしたのが､長瀬富郎でした｡
彼の名前を知らなくても､彼の作った花王石けんを知らない人はいないのではないでしょうか｡
富郎は､文久3年(1863)､美濃国恵那郡福岡村(岐阜県恵那郡福岡町)で生まれました｡
明治7年(1874)､11歳で雑貨商へ奉公し､商売を身につける傍ら､夜学で学ぶなどの努力を続け､明治16年には支店の副支配人を任されました｡
明治18年､独立のため奉公を辞めて上京しました｡
上京後も苦労を重ねましたが､明治20年には自分の店を開き､西洋雑貨を扱いました｡
その当時の石けんは､非常に高価な輸入品と品質の劣る国産品とがほとんどでした｡
明治23年､富郎は高品質の石けんが安く人々に手にはいるよう､製造販売を手がけました｡
自ら研究を重ね､有能な協力者を得て､｢花王石鹸｣の発売にこぎ着けます｡
外国産に勝る品質でありながら､値段はわずか3分の1以下でした｡
富郎は､品質の向上とともに､広告宣伝にも力を入れ､販売網を整備し､事業を拡大していきました｡
明治27年には､東京小間物同業組合理事に就任し､業界を代表する人物としても活動をしていきます｡なかでも明治43年の香料輸入税無税の実現に業界のﾘｰﾀﾞｰとして奔走し､業界長年の願いを実現したことは彼の大きな功績とされています｡
明治42年には肺の疾患を発病し､その後は､業務を勤めながら療養する状態が続きました｡
明治44年､49歳の若さで亡くなりました｡
彼の作った長瀬商店は､｢合資会社長瀬商会｣｢花王石鹸株式会社長瀬商会｣などと改組改名をしながら､現在の｢花王株式会社｣へと続いています｡
[参考文献(いずれも岐阜県図書館所蔵)]
『花王石鹸五十年史』 花王石鹸 1940年
『初代長瀬富郎伝』 服部之総 花王石鹸 1940年
『花王石鹸八十年史』 花王石鹸 1971年
『日本の創造力 第7巻』 日本放送出版協会 1992年
(岐阜県図書館 稲垣記)