○岐阜県ゆかりの先駆者たち
第14回
宗和流茶道の祖
金森宗和(かなもりそうわ)
1584-1656(天正12年-明暦2年)
今から四百年ほど前､飛騨国高山育ちの茶人金森宗和が､上品と繊細を特徴とする茶道の一派を創始しました｡
金森重近(宗和)は､天正12(1584)年､第2代高山城主金森可重の長男として生まれました｡代々茶の湯をたしなむ家系に育ち､その才能にも恵まれていたようです｡
運命が大きく変わるのは慶長19(1614)年､30歳の時です｡父から勘当を申し渡され､家督は三男の重頼が嗣ぐこととなりました｡
勘当の理由は明らかでありませんが､父の意に反して豊臣方に加担し大阪冬の陣への従軍を拒んだからとも､何らかの政治的配慮があったからとも言われています｡
勘当を受けた重近(宗和)は､母とともに京都に移り住み､大徳寺で禅を学び､剃髪して｢宗和｣と号します｡公家との交友を深め､やがて茶人として名を成します｡
宗和の茶道の特徴は､｢姫宗和｣と呼ばれるように､古田織部､小堀遠州の作風を取り入れながらも､自然で上品で繊細な点にあり､公家社会を中心に広く受け入れられました｡
また､野々村仁清の御室焼を援助して茶道界と仁清の仲介役を果たすなど､京都の文化に大きな足跡を残しました｡
宗和は､明暦2(1656)年､73歳で没しました｡
宗和流茶道は､その後金沢を中心に伝えられ､やがて故郷高山にも辿り着き､寺院を中心に伝承されました｡
昭和39(1964)年､宗和流茶道は高山市の無形文化財に指定されました｡
四百年の時を超えて宗和の茶の湯のこころは今でも郷土高山で引き継がれています｡
[岐阜県図書館所蔵 参考資料]
『金森宗和茶書』 谷晃校訂 思文閣出版 1997
『寛政重修諸家譜』 続群書類従完成会
『岐阜県郷土偉人伝』 杉浦秋次郎編 岐阜県郷土偉人伝編纂会 1933
『岐阜県史』 岐阜県
『国史大事典』 吉川弘文館
『史料による茶の湯の歴史』(下) 熊倉功夫ほか 主婦の友社 1995
『高山の文化財』 高山市教育委員会編刊 1994
『茶室の研究』 中村昌生 河原書店 2000
『茶人の逸話』 筒井紘一 淡交社 1984
『茶人の旅』 野村瑞典 芸艸堂 1984
『日本の茶家』 井口海仙ほか編 河原書店 1983
『日本の茶道の流れ』 戸川宗積 大絖書店 1985
『飛騨偉人銘銘伝』 濃飛展望編刊 1976
『飛騨人物事典』 飛騨人物事典編纂室編 高山市民時報社 2000
『飛騨に伝はる宗和流茶道』森本宗樹述 宗和流茶道四常社 1961
『ひだびとのあしあと』 飛騨教育史学研究会編著 岐阜新聞社出版局 1999
(岐阜県図書館 坪井記)