○岐阜県ゆかりの先駆者たち
第19回
日本最初の政治小説『情海波瀾』の著者
戸田欽堂(とだきんどう)
1850-1890(嘉永3年-明治23年)
 戸田欽堂は、幕末の大垣藩主戸田氏正の側室の子として、嘉永3年、大垣城内で生まれました。
 明治4年、21歳の時、藩主氏共とともに渡米遊学をし、欽堂はキリスト教の洗礼を受けたといわれています。
 翌年に帰国し、銀座に「九星堂」という洋物店を開きました。
 また、同じキリスト教徒であった原胤昭らと共同で十字屋を創業し、聖書などを販売しました。
 西南の役ののち、自由民権運動が活発化すると、明治11年、欽堂は北辰社や愛民社という民権結社をつくり、民権思想を広めるため各地で演説会を開きます。そのかたわら小説家として『情海波瀾』『吾妻ゑびす』などの政治小説を書いていきました。
なかでも明治13年に出版された『情海波瀾』は彼の代表的作品であり、日本最初の政治小説とされています。
 欽堂はその後も国会開設建議の草案を書いたり、また各種の新聞で自由民権運動の論陣を張ったりと、華族出身の民権運動家として活躍します。
 キリスト教の伝道と自由民権運動に力を注いだ戸田欽堂でしたが、病のため41歳という若さで亡くなります。明治23年のことで、それは国会開設の年でした。
[参考文献(いずれも岐阜県図書館所蔵)]
『新修大垣市史(通史編2)』 大垣市 1968年
『改訂増補 郷土大垣の輝く先人』 大垣市文教協会 2004年
『郷土歴史人物事典岐阜』 吉岡勲 第一法規 1980年
『岐阜県人』 吉岡勲 新人物往来社 1977年
『岐阜文化スケッチ』 岐阜県ユネスコ協会 1968年
『歴史芸能回り舞台』 山田賢二 まつお出版 1994年
『西美濃わが街』<特集・戸田欽堂とその周辺> 第87号(1984年8月)
『情海夜話と戸田欽堂』 柳田泉 春秋社 1967年
『政治小説の論』 松井幸子 桜楓社 1979年
[戸田欽堂の著作(いずれも岐阜県図書館所蔵)]
『情海波瀾』 1880年
『薫兮東風英軍記』 1882年
『論理学』(ゼボン著、戸田欽堂訳) 1886年
『吾妻ゑびす』 1887年
『花柳粋史』第1号〜第3号(戸田欽堂編) 1887年
(岐阜県図書館 後藤記)